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やり抜く力~三番目のレンガ職人?

2018.02.06猪俣恭子

部下や社員の最後まであきらめずやり抜く力が
どうも今ひとつ・・・と思うことはなかろうか。
どうしたらもっとやる気をもって仕事をしてくれるのだろう、
上司の悩みはそこに尽きるといっても過言ではない。

ところで、私は20代の頃、銀行で研修の仕事をしていた。
女子行員対象のリーダー研修を実施したとき、
外部から講師をお招きし、担当いただいたことがある。
昼食をご一緒していた時のことだ。
仕事はどうかのような話の流れになったと思う。

「数%のやりたいことのために、
 残りの仕事をしている感じがします」

私がそう伝えると、講師は、即こう返された。

「え? 数%しかやりたいことがないの?
 まあ、可哀そうに」

可哀そうなことなのか?
周りの人はもっともっと自分のやりたいことを
やっているのだろうか?
仕事は、そもそもやりたいことばかりではないのでは?
むしろ、やりたくないと感じるもののほうが多いのでは?
少し混乱したのを昨日のことのように覚えている。

さて、最近、
『やりぬく力』(ダイヤモンド社 アンジェラ・ダックワース)を読んだ。
副題に「人生のあらゆる成功を決める究極の能力を身につける」とある。
ペンシルべニア大学心理学教授の著者の研究に基づく理論は、
非常に納得度が高い。
興味深い箇所はたくさんあるが、
冒頭に関連したものとして、以下を紹介したい。

著者によると、「目的」という存在は、
ほとんどの人にとって、とてつもなく強力なモチベーションの源になっているそうだ。
本では、「レンガ職人」の寓話を例えにだしている。

・・・・・・・・・・・(一部抜粋)・・・・・・・・・・

ある人がレンガ職人に「なにをしているんですか?」とたずねた。
すると、三者三様の答が返ってきた。
一番目の職人は「レンガを積んでいるんだよ」。
二番目の職人は「教会をつくっているんだ」。
三番目の職人は「歴史に残る大聖堂を造っているんだ」。

一番目のレンガ職人にとって、
レンガ積みはたんなる「仕事」。
つまり「私にとってこの仕事は、
呼吸や睡眠のように生きるために必要なこと」という捉え方。
二番目の職人にとって、レンガ積みは「キャリア」。
これは、「私にとってこの仕事は、もっといい仕事をするためのステップだ」、
という意味あいだ。
三番目の職人にとっては、レンガ積みは「天職」を意味する。
そして、これは、
「私にとってこの仕事は、人生でいちばん大切なもののひとつだ」という捉え方になる。
自分の職業を「天職」だと思っている人は、
自分の職業を「仕事」あるいは「キャリア」と思っている人たちに比べて、
「やり抜く力」が強いことがわかっている。
また、自分の職業を「天職」と思っている人たちは、
「私の仕事は世の中をよくするのに役立つ」という言葉をよく口にする。
そういう人たちは、自分の仕事や人生に対して、全体的にもっとも満足しているそうだ。
ある研究所では、
自分の職業を「天職」だと思っている人たちは、
自分の職業を「仕事」や「キャリア」だと思っている人に比べ、
疾病休暇の取得日数が3分の1程度しかないこともわかっている。

・・・・・・・・・・・・

20代の頃の自分を思い起こした。
レンガ職人の例にあてはめれば、
あの当時の私にとって、仕事は「キャリア」だった。
いや、「キャリア」を感じた場面は、
実際には研修講師を担当していた時くらい。
他は研修務局の事務や事務作業が仕事がメインだった。
そういった仕事は、たんなる「仕事」でしかなかった。
それらは退屈に感じたものだった。
それでも、捉え方次第で意義を見出すことはできたのだろうか?
それらが、自分の目的につながっていると仮定したら、
何かしら意味付けはできたのだろうか?
もしもそうしていたら、「つまらないな」「ああ、苦痛だな」
と感じるばかりでなく、違う捉え方で一日そのものを違う感情をもって
過ごせたかもしれない。

この本には、
「私のやっていることは、社会にとって重要な意味がある」という表現が
自分自身にあてはまると答えた人は、
「やり抜く力」が高いことがわかっているそうだ。

会社にいれば、
部下や社員の最後まであきらめず「やり抜く力」が気になるだろう。
この本から学んだことを活かすのであれば、
こんな問いを共有してみるのはどうだろう?
 
 今、あなたがしている仕事が、
 社会にとって重要な意味があるとしたらどう思う?
他には、こんな問いもどうだろう。
 あなたがしている仕事が、
 あなたが仕事をしている目的につながっているとしたら、
 どんな意味付けができる?

と。
あっ、しかしなあ。
そもそも部下が、「なんのために仕事をしているのか」という
目的があいまいだったら、これらの問いも宙に浮くばかりだ。
ならば、まずやれることは?
仕事をしている目的、動機を部下に思い出させることだ。
描かせることだ。
「生活のためですよ」
「お金のためですよ」
「キャリアアップのためですよ」
もしかしたら、がっかりする答えが返ってくるかもしれない。
しかし、それが相手の本当の答と決めつけるのはまだ早い。
折に触れ質問してみよう。
「あなたがこの仕事を選んだわけは?」と。
「何のために働いているの?」と。

同時にもっと重要なのは、
あなた自身も自分が働く目的を明快にすることだ。
三番目のレンガ職人のような目的を。
そんなあなたに影響を受けて、
部下は言葉こそ出さないだろうが、
きっと今の仕事を「作業」から「キャリア」へ、
そして、「キャリア」から「天職」に変えられるようになるだろう。

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