株式会社ストーリー アイ blog 部下育成のヒント

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『女性のためのリーダーシップ術』裏話
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最初に心の状態を整える(2)…愚痴なんて、さようなら!

2015.05.06猪俣恭子

「部下や後輩の接し方や育て方についてアドバイスをお願いできますか?」

あなただったらどう答えますか?

  タイミングよく褒める?
  注意せねばならないときはちゃんと注意する?
  よく相手の話を聞く?
  ちょっと背伸びするくらいの仕事を与える?
  仕事の目的もきちんと説明したうえで指示をする?

など…。

私はどうですかって?
そうですね。私だったらこう答えます。
どう育てるかの前に、まず自分自身。
絶対に愚痴を言わないこと、と。

実はお恥ずかしい話、
私にはこのような経験があります。

印刷会社に勤めていた時のことです。
後継者の立場として、
自分自身のリーダーぶりはどうなのか、
他の社員からどのように思われているのか知りたいと思い、
女性社員のTさんに訊ねたことがありました。
Tさんは23歳と若手ながら、確実な仕事ぶりに、
お客様からも社内からも信頼されていたデザイナーでした。

  じゃあ、言わせてもらいますが。

“じゃあ?”
一体、何がでてくるのだろうと、
身構えながら次の言葉を待ちました。

  愚痴ばっかり言っている人に、
  残念ながらついていきたいとは思えないです。

か細い声のトーンに、
勇気をふりしぼっている様子が感じられました。
それだけに真実なのかと、かなり落ち込みました。
しかし、思い当たる節はありました。

  うちの会社は体質が古い。機械の設備に頼ってばかりじゃ先がない。
  インキの汚れに気付いているのに、そのまま進めているなんて信じられない。
  お客様からの質問にその場で答えられなかったら、検討しますくらい言わないと
   他の印刷会社にとられちゃうでしょ。
  あのお客様はいつも原稿の入稿が遅くて、それでいて納期は変わらないんだから、
   うちの会社にしわよせがくるばかり。
  仕事の単価があまりにも低い。これじゃいくら仕事をしても売上が伸びない。

私としては、若手社員たちにも危機意識を持ってもらいたくて、
一緒に「いい会社」を創ろう! という気持ちからだったのです。
いやはや、甘かったですね。
そもそも、経営者側にとって危機意識はモチベーションになりますが、
従業員側はそんなものは全くモチベーションになりません。
不安だけが残るのですから。
彼女彼らが聞きたかったのは、
この会社にいることで、
希望を感じられる未来がどれくらいあるかです。
どんな楽しいことがあって、
どんな成長ができて、
どんないいことが自分にあるか、なのです。
なのに当時の私は、そんな当たり前のことに気づいていませんでした。
結局、不安ばかりあおっていたのです。

「愚痴」は「不平不満」。
では、それをどのようにクリアしたいのか、
どう改善したいのか、
そのために何をしたらいいのか、
それを語っていたら、まるで違った結果になっていたことでしょう。

それからは会社に一歩入ったら、
愚痴は一切やめました。
結果として、職場で私が話す量が減りました。
自ずと周りの部下や後輩が話す量が増えました。
次第に職場の雰囲気が変わりました。
明るくなったのです。
「これどうやるんだっけ?」
「このキャッチコピーにあうイラスト持っている?」
「スキャニング、あとどれくらいで終わりそう?」
など、お互いに確認しあう会話が増え、
しかもお互いの声も以前よりも大きく、はつらつした響きになりました。

では、愚痴を言わなくなった私はその後どうなったかというと、
不思議なことにイライラしなくなりました。
おそらく「よりよい結果に向けて、今できることは何か」に
集中できるようになったからだと思います。

工場からの報告がなければ、いつもの声のトーンで、
「気づいたらすぐ社長か私に教えてくださいね。
 うちの印刷物は仕上がりがいいというお客様の期待に応えたいので、
 よろしくお願いします」
とお願いする。
それでどんなことでも小さな報告があったら、
「気づいてくれてよかった! さすが○○さん。だから安心して任せられます」
とねぎらう。

二ヶ月くらいたった頃でしょうか。
Tさんに言われました。
「最近、猪俣さん変わりましたね。でも時々また戻るけど。(笑)」と。
社長の父からは「最近、ようやくリーダーらしくなってきたな」と。
私が周囲を観察しているようで、
実は、思っている以上に、
周囲のほうが私を観ていたことに気づきました。

ふと思い出しました。
あるチームで仕事をしていた時のリーダーのことを。
そのリーダーは、自分と価値観があわないメンバーについて、
「なんでああいう態度なのか、発言なのか」と、しょっちゅう愚痴めいていました。
「そんなことはない」と否定するわけにもいかず、
私は「うんうん」と聞いているばかり。
そのうち、非難の的となっているメンバーとどう関わればいいのか迷い、
また、リーダーの非難の矛先が自分にならないようにとかなり気を遣って、
ほとほと疲れました。

ああ、なるほど。
印刷会社の時の私は、このリーダーがしていたことと同じだったのだな…と。
人間関係に気を遣う場では、人は育たないだろな…と。

部下や後輩の接し方や育て方?
どう関わるかよりも、まずは自分自身。
一切、愚痴を言わないこと。
でも、ずっと言わない?
いえいえ、信頼できる友人にだったら、
聞いてもらっていいんじゃないかと思います。
できれば利害関係のない人に。
でも、ずーっと愚痴っているのではなく、
時間を決めて思いっきり。
5分ノンストップ一本勝負、とか。
最後は聞いてくれた相手に「ありがとう」と感謝を告げて。
次回はあなたが相手の愚痴を思いっきり聞いてあげる。
そして二人で大声で笑いあう。

そんな逃げ道をつくりながら、
軽やかに、時としてユーモアも交えながら、
部下や後輩と向き合ってみたらいかがでしょう?
どんな状況になっても、どうぞシリアスになりすぎずに。

そうやって「心の状態を整える」。
まずは、愚痴を言いたくなっている自分に気づくこと。
もしくは言っている自分に気づくこと。
そこからがスタートすれば、きっと相手といい関係が創れるでしょう。

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